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定価 : ¥ 1,575
販売元 : 講談社
発売日 : 2003-06-21 |
価格:¥ 1,575
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我々日本人は、どうやら高校あたりから人を理系・文系と判断する習慣が身についてしまっているようだ。特に会社に入ると、学歴以上に理系・文系の違いが意識されているように感じる。「私は文系だからコンピュータには疎くて…」「理系なもので、微妙な表現は苦手で…」という会話は日常的に聞かれるところだろう。同じ人間であるにも関わらず、ここまで我々の思考を支配する理系・文系の見えない壁。その一方である理系について、リアルな現状と抱える問題を多角的に解説したのが本書である。 「生涯賃金の格差、家1軒分=5000万円」「技官の出世は局長止まり」(「第1章 文系の王国」より)と、ショッキングな事実から始まる本書は、一瞬理系のルサンチマンを連ねた本と錯覚しそうである。青色LEDで一躍話題になった開発者の権利のように、不当な扱いを受けているという事実は確かにあるのだろう。しかしその一方で、社会との接点の薄さや研究データ改ざん等のモラルハザードのような理系特有の問題もある。本書はそれらをえぐりつつ、さらに、理系教育のあり方、増え続ける博士の就職難、女性研究者の抱える問題、研究期間や費用の問題などの理系の現状をリアルに伝え、あるべき理系の未来像を描き出していく。章末の「課題を聞く」では、田中耕一さんら理系の第一人者たちに各章のテーマをぶつけている。 本書で言う「理系」は主に研究者を指しており、章によってその定義も若干揺らいでいるように感じる。それは逆に言えば、「理系」のステレオタイプが研究者の姿にあることの証拠でもある。理系として生きてきた人には共感を得つつ現実を見つめ直すため、これから理系として生きていこうとしている人には自らへの課題を明確にしていくための指標となるだろう。(大脇太一)
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毎日新聞科学環境面の大型企画「理系白書」の2002年1月から翌年4月までの連載を、単行本のために加筆したもの。デスク以下、各記者の科学に対する情熱ぶりは相当なもの。記事のクオリティにもバラツキなし。
理系の人に取材をして、各種データと絡めて、日本の科学技術の現状を伝える。とくに科学技術を仕事にしている人たちの現状(食べていけるか)をよく伝えている。その実情とは、「なかなか報われない」といったもの。
全体の調子はたしかに他のレビュアーが書かれているとおり、「応援」というよりは「憐憫」に近い雰囲気。新聞報道は批判精神があって当然だから、すべてが問題提起型なんだと捉えた。明るい調子のニュースばかり載っていてもつまらないだろうから。
この本を読むと、理系にとっては浮かばれない現状がこの国にはたしかに存在すると思えてくる。たとえば、官僚の事務次官(文系中心)と技官(理系中心)の待遇の差。または、大学院で博士号を取ったあと職にあぶれる「ポスドク問題」。さらには、女性研究者が受けるセクシャル・ハラスメントやアカデミック・ハラスメント(学問的差別)問題…。日本が抱えている問題をつぎつぎと晒していく。
いまも新聞紙上では「理系白書」の連載が続いている。これからも新聞は科学技術の現状を憂い続けてほしい。
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よく取材されていると感じる一方で苛立ちを感じる点があります。
1点目は「理系」=「研究者」としていること。
一面的だと思います。エンジニアも花形ばかりをあつかっているので、卑屈ですが、土木関係の技術者としては、寂しいばかりです。
2点目は「理系」対「文系」の対立図式で書かれてること。
なにか、エールを送りつつも「理系」の敗北宣言をされてるような気がします。
僕の考えでは、理系も文系もなく、対立の問題も調和の理想も、とってつけのレトリックだと思います。良い研究や仕事とは、真の専門家がトライするイマジネーションにあふれる問題提起のことだと考えます。具体的には、後続が我もやってみたいと思わせる論文とか報告書です。結局は、想像力と好奇心と実行力の多寡にかかってくるだけで、名前として現れるのは理系・文系の大ざっぱなものじゃなくて、「地質調査」とか「新聞の編集」とか、「印刷技術」とか、「絵画」とかしかないと思います。
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確かに、本書に登場する「理系」の人々は「真摯」に努力されているのだと思います。不当な評価に不満を持つのももっともなのですが、残念なことに、この本は毎日新聞記者のルサンチマンが「理系」の意識を改ざんして伝えているのではないかと…私にはこの本が文理の統合を唱えながら、言外に文系、理系の対抗意識を煽っているように見えます。
理系は馬鹿にされている、過小評価されている、というモチーフは「ホワイトカラー(管理職)がブルーカラー(現場)を搾取する」という階級意識の亜流に過ぎない。朝日、読売、毎日のブルジョワ新聞三紙は95年ごろからでしょうか、完全に左傾してしまった。青色LEDの研究者の姿勢からも明らかなように、当の「理系」に文理の二項対立の意識は無い。むしろ今回言われて初めて気づいた(気に入った)という程のものでしょう。現実の問題を考えるうえで優先されるべきは「対立」ではなく「調和」であるはず。青色LEDのケースでは研究者が法廷闘争のダイナミズムを通して階級的情熱(と物欲)を満足させた訳ですが……
文理間の報酬、役職の格差を是正すれば終わる問題に、毎日新聞科学環境部は己の階級的情熱を炸裂させている。
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私は近畿圏にある大学の経済学部3回生です。文系です。
本のタイトルからして文系の私が読むことに多少の抵抗はありましたが、
いざ読んでみると、これはけっして理系の人だけが読む本じゃないなと思いました。
「理系白書」は確かに書かれてある視点が、技術系研究者向けもしくは理系的思考を志す人向けではあるのですが、
その中に多分に含まれているメッセージは、文系に強く向けられているものだと感じました。
もちろん、それはけっして、文系の人たちへの攻撃的なメッセージではありません。
文系の人たちは文系の中で得た知識だけで十分働き、そして生きていけますが、
理系の人たちは文系の知識を前提とした上で、
より発展的に理系特有の諸知識を構築していかなければならないという点で、
文系よりも二重三重に大変な位置にいる人たちだと思います。
そうなる理由を、学問として文系と理系では知識体系が決定的に違うからと言ってしまえばそれまでですが、
そもそも、学問に決定的な差異など見られないものだと私は考えています。
「文系だから」「理系だから」という学問上のラベリングに元凶があるような気がしてなりません。
ともかく、文系の人も一度読んでみてほしいと思います。
いかに私たち文系が、無意識の内に社会的に優遇されてきたかがよくわかるはずです。
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一般的に言って
文系の人間に比べて、理系の人間の勉強の方が
勉強ができるし、努力している。
なのに報われないのはどうしてだろうか?
本書は上記の疑問から始まる。
そして、日本社会が文系人間によって支配されていて
給与や地位といった社会的待遇において
理系人間が冷遇されている。
満足な報酬を受け取れない技術者、
問題だらけの研究制度、
科学に関心をもてない教育風土、
他に現在問題となっているいくつものトピック。
そのような現実を本書では浮き彫りにする。
科学技術を軽視する社会の未来は
明るくありません。
知れば知るほど、理系を軽視する日本の将来
危ういものであるように思えてきました。
現在の文系中心の社会システムは
限界に達しており、見直す必要がある。
本書を読んで強くそう思いました。
文系人間こそ、この国を静かに支える人たちの現状を知るべきです。
日本は理系の人々のおかげでここまで豊かになれたのですから。
文系人間は本書を一度読んでみるべきです。